Drug Discovery AI Factoryとは?

このページでは、FRONTEOのAIを活用した創薬支援サービス「Drug Discovery AI Factory」の特長、独自の解析手法、その結果どんな成果物やメリットを得られるのかをインタビュー取材もまじえてご紹介します。

目次

「Drug Discovery AI Factory」とはどんなサービス?

創薬研究の効率化・加速化・成功確率向上に寄与

日本は世界の中でも数少ない医薬品の創出能力を持つ国の一つ。ただ近年は開発コストの高騰や開発期間の長期化、成功確率の低下などの課題に直面し、創薬プロセスの改善が求められています。

FRONTEOの「Drug Discovery AI Factory」は顧客企業における、創薬研究の効率化・加速化・成功確率向上に貢献する情報解析と提案を行なう創薬支援サービス。特にAI活用が進んでいない「ターゲット選定」「仮説生成」「基礎研究」といった創薬の初期段階にアプローチできる数少ないAIを持ち、製薬企業出身のバイオロジストが顧客のオーダーにあわせた、標的分子・バイオマーカー・MoA・新たな適応症の提案などを行なってくれます。

ターゲット探索・選定の段階において、大きな課題と言えるのが「標的分子の枯渇(質と数)」「疾患と標的の繋がりや薬理作用機序解明の難しさ」「上市後の収益の差は上市までのスピードに依存してしまう」という点です。

こうした課題をFRONTEOの「Drug Discovery AI Factory」は以下のような強みを用いて解決へと導きます。

「Drug Discovery AI Factory」では重複差分解析・Virtual Experiments・多面的解析・二次元マッピング解析・ベクトル加算解析という独自の5つの解析手法を用いています。これを活用することによって、具体的に何が得られるのか、以下のインタビュー取材で詳しく紹介します。




【特別インタビュー】担当者に聞く
「Drug Discovery AI Factory」の可能性
FRONTEO執行役員/ライフサイエンスAI事業本部長 兼 行動情報科学研究所長 CTO 博士(理学)豊柴 博義氏
FRONTEO執行役員/ライフサイエンスAI事業本部長 兼 行動情報科学研究所長 CTO 博士(理学)豊柴 博義氏

当メディアを運営する「New-drug-discovery」編集チームでは、「開発に十数年…」「成功確率は3万分の1…」「開発コストは数億円…」と創薬の領域における大きな課題を解決しうるサービスとして、 FRONTEOの「Drug Discovery AI Factory」に注目。FRONTEOの執行役員でライフサイエンスAI事業本部本部長を務める豊柴 博義氏に、インタビュー取材をし、そのサービスの魅力や解析手法について詳しく聞いてきました。

重複差分解析とは?

重複差分解析

Q.「重複差分解析」ではどのような成果物やメリットが得られるのでしょうか?

FRONTEO豊柴氏: 一つは仮説になりえるソースの「量」を担保できるという点ですね。例えば、アイデアのソースが頭の中に200しかなかったら、AIなら少なくとも600、約3倍程度のソースが出せる、というイメージです。研究者が頭の中に描いているものがより広くなり、それがしっかりと可視化される。しかも高スループットで提供できる、というのが我々の強みと言えます。

もう一つは、新規性。この重複差分解析は疾患のネットワークの繋がりを重ね合わせて、重複している部分と差分を見るというものですが、その繋がりが自分では想像していなかったものが出てきたり、記憶している以上のものが出てきて、考え方の方向性が変わったりと新しいインプットが得られます。

製薬業界ではシーズの枯渇というのが大きな課題として言われていますから、新しいアイデアを出せるというのは画期的であり、求められている部分だと思います。

Q.「高スループット」というお話がありましたが、疾患のネットワークはどれくらいの時間で出せるものなのでしょうか?

FRONTEO豊柴氏: ネットワーク自体は10分で作れます。このネットワークを人の手で作ろうと思ったら、数か月はかかると思います。しかも、ただネットワークを作るだけではなく、仮説も必要。網羅的に仮説を立てるなら、前提としてPubMed(※)にある3000万報以上の論文を読み込む必要があります。これはどんなに優秀な研究者の方であっても難しいと思いますが、それがAIなら10分で行なえるわけです。

しかも我々はAIでネットワークを出すだけではなく、製薬企業出身で長年新薬開発に携わってきたバイオロジストが「こういう可能性がある」という点をバックグラウンドや動機づけを含めてしっかりと説明します。ここは弊社ならではの強みだと思っています。

※米国国立医学図書館内の国立生物科学情報センターが作成する生物医学領域の論文データベース

二次元マッピング解析とは?

2次元マッピング解析

Q.「二次元マッピング解析」ではどのような成果物やメリットが得られるのでしょうか?

FRONTEO豊柴氏: 「仮説生成のヒントが得られる」ということですね。この二次元マッピング解析では注目する細胞機能等と概念的類似性の高い遺伝子を抽出し、プロットします。そして、遺伝子同士がオーバーラップしているエリアに含まれる遺伝子群を弊社の論文探索AI「KIBIT Amanogawa」で洗い出し、そこから仮説につながるヒントを得る、という仕組みです。

Q.そもそもなぜ、こうしたマッピング解析が可能なのでしょうか?

FRONTEO豊柴氏: 地図をイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。文書の貯まりの中に書かれている、1つ1つの用語を地図の点として置いています。なぜできるかというとベクトル、つまり座標ができているから。北緯、東西経があるからマップができるのと同じで、ベクトルとして数値化しているので、一つのワードの位置を地図上に置くことできるわけです。ベクトル化されるのは遺伝子や細胞などのすべての情報で、言葉に連なる様々な意味合いや概念もそこに含まれていて、近いものをマッピングしていきます。

例えば、「アルツハイマーの薬で有名な遺伝子」があったとします。これに紐づくワードとして「認知症」「徘徊」などが表示されても、新しい発見はありません。ですが、一見関係ないような「免疫」というワードが出てきたら、どうでしょうか?「なぜ、アルツハイマーの薬となる遺伝子が『免疫』が近いのか?」と疑問に感じますよね。これが新しい気づき、仮説生成のヒントになるわけです。

こうした気づきは、3000万報以上の論文を網羅的に読み込んでいないと得られません。研究者の方が普段見えているようで見えてない部分をマッピング化する。既知の情報から未知のものを視覚化できる、というのがこの二次元マッピングの特長と言えます。

ベクトル加算解析とは?

ベクトル加算解析

Q.「ベクトル加算解析」ではどのような成果物やメリットが得られるのでしょうか?

FRONTEO豊柴氏: ベクトルというのは概念で、上の図のとおり、ベクトル化できると概念と概念の足し算・引き算ができるようになります。「王様」から「男性」という概念を引いて、「女性」の概念を足すと「女王様」になる。「王様」という概念から「男性」という性別を除くと「権威」だけが残ります、その権威に「女性」という性別を足すと女王様になります。こういう概念の足し算・引き算ができるのがベクトル加算。

例えば、「アルツハイマー」という概念は、年齢を重ねると発症の確率が高くなります。「加齢」という言葉の周囲にはそれにまつわる文章があって、その概念を作っています。ここに疾患としての関係性・原因性となりえるものがあるとして、我々のAIは独自の計算式・近似式的なものがあって、原因性スコアを出していきます

アルツハイマーにおける「加齢」の原因性スコアが仮に「100」のうち「0.4」「0.3」だったとしたら、「加齢」がアルツハイマーの直接的な原因とはなりにくい、ということがわかります。これを「加齢」だけじゃない他の要素で原因性スコアを出していって、何を足したら数値が上がるのかを見ていけば、「これがアルツハイマーの直接的な原因じゃないのか」という推測ができるようになります。

Q.仮説生成の役に立つ、ということでしょうか…?

FRONTEO豊柴氏: いえ、どちらかというと、ターゲットの優先順位付けに役立つものだと考えています。今の例でお話しすると、「加齢」に何が紐づいたら疾患の原因性スコアが上がるかと言えば、例えば、心不全で亡くなる方は、高血圧は絶対。「脂質異常」があり、「血糖値が高い」など。これらが一つずつ増えていったら、死亡の確率は上がりますよね。

この1つ1つの要素がベクトルであり、「1つの要素×生活環境」よりも「2つの要素×生活環境」のほうが当然ながら原因性スコアは高くなります。この1つ1つの要素をしっかりとチェックしていけば、ターゲットの優先順位が付けやすくなるはずです。

多面的解析とは?

多面的解析

Q.「多面的解析」ではどのような成果物やメリットが得られるのでしょうか?

FRONTEO豊柴氏: これは弊社のAIアプリケーションを使って、創薬標的候補の遺伝子に対する「適応疾患候補リスト」を出すことができます。1万2000もの疾患の中から優先順位をつけてリスト化されるので、ドラッグリポジショニングの活用に役立てると考えています。疾患の中には想定したものがあれば、全く予想外の疾患が出てくることもありますね。

こうした「適応疾患候補リストを出す」という作業は、場合によっては実験データ、ウェットのデータをとって行ないますし、それほど多くの疾患を選ぶことはできません。この多面的解析が大きく違うところは、1万2000の疾患に対して、関連性・原因性・優位性・安全性などの評価項目をスピーディーにスコア化して優先順位付けできるという点です。これを見て研究者の方は「こんな疾患にも可能性があるのか」という気づきを得ることができます。

この多面的解析を使えば、せっかくいいものができたのに、開発中止になってしまったものに再度日を当てることができますし、一次スクリーニング的にも非常に有用なのかなと思います。

Q.数値化された優先順位付けがあることによって、例えば、創薬の成功確率を上げることに寄与するのでしょうか?

FRONTEO豊柴氏: 必ず成功確率が上がるとは断言できませんが、少なくとも意思決定の速度を上げて効率的に研究を行なうことには寄与するので、アイデアを出すという意味では直接的に、優先順位付けなどでは間接的にも寄与しているとは言えます。

Virtual experimentsとは?

Virtual experiments

Q.「Virtual experiments」ではどのような成果物やメリットが得られるのでしょうか?

FRONTEO豊柴氏: これは純粋にネットワークの中から存在を1つ消すことができる、つまりノックアウトできるということが大きなメリットです。頭の中にある、想像しているネットワークや繋がりを可視化し、文書情報から書き直してくれます。

例えば、あるネットワークから遺伝子Aをノックアウトした場合、別の遺伝子に置換されただけなら、ネットワークへの影響は小さいと言えます。同じネットワークで今度は遺伝子Bをノックアウトした場合、ネットワークが大きく変わってしまった場合は遺伝子Bがキー遺伝子だと考えられます。

こうした作業を動物実験なしで、ドライで予測できるというのが大きな特長です。文書情報から言葉の情報を消して書き直すので、「○○がいない世界」みたいなものを出せるというイメージですね。それができるからプロファイリングも可能になります。

考察

「AIだけじゃない」がDrug Discovery AI Factoryの魅力
~「New-drug-discovery」編集チーム(Zenken)より~

新薬開発に関する様々なAIアプリケーションが開発され、導入を検討している製薬企業も増えてきていますが、FRONTEOの創薬支援サービス「Drug Discovery AI Factory」が他社と大きく違うのは、「ただAIを活用する」ではなく、大手製薬企業出身のバイオロジストが仮説や論拠も含めて提案してくれるという点です。例えば、「ターゲット探索・選定」においても、標的の精査・因果関係の考察等に多大な時間や労力を費やしている製薬業界の現状を鑑みても、非常に画期的なサービスと言えるでしょう。

創薬プロセス、とりわけ初期段階の効率化・高速化を図りたいと考えているなら、FRONTEOの「Drug Discovery AI Factory」がその課題を解決してくれるかもしれません。公式ホームページではより詳しい情報を確認できるので、ぜひチェックしてみてください。

取材協力
FRONTEOの公式サイトキャプチャ

引用元:FRONTEO公式HP
(https://a6ny5mfs.lp-essence.com/)

自然言語AI+バイオロジストが課題を解決

FRONTEOの「Drug Discovery AI Factory」は、AIを活用して、創薬プロセスの効率化・高速化を支援するソリューションです。基礎研究・標的探索・仮説生成といった創薬の初期段階において、大手製薬企業出身のバイオロジストが自社開発の自然言語AI「KIBIT」を活用し、重複差分解析や2次元マッピング解析、ベクトル加算解析など独自の解析を実施。顧客のオーダーにあわせた標的分子・バイオマーカー・MoA・新たな適応症の提案などをスピーディーに行なってくれます。