デジタルツインとAI創薬との関係性

デジタルツインとは

デジタルツインとは、IoTで集めた"現実世界に存在するもの"や"発生する現象"のデータをサイバー空間で再現し、あたかも仮想空間において現実世界と同じ現象が発生しているかのようにシミュレーションするデジタル技術のことです。

デジタルツインは単なる仮想現実とは異なり、あくまでも現実の現象や世界をそのままデジタルデータとして再現し、リアルタイムで現象をモニタリングすることがポイントです。そのため高度なデジタルツインは現実世界の現象を反映するものであり、言い換えればデジタルツインによってもたらされた結果は実現性の高い可能性であるといえます。

そのため、現実の双子のような存在として「デジタルツイン」と呼ばれています。

デジタルツインとシミュレーションの違い

シミュレーションとは、あらかじめ構築しておいたアルゴリズムにデータを反映させて、その結果を予測する分析手法です。そのためアルゴリズムの品質やデータの精度によって結果は左右されるものであり、またアルゴリズムが想定していない現象をシミュレーションで予測することはできません。

一方、デジタルツインは現実世界で起こり得る現象をそのまま仮想空間上で再現することが目的であり、現実世界を観測するように、様々な可能性をリアルタイムでモニタリングできることが重要です。

デジタルツインとAI創薬の関係

デジタルツインという概念や技術は以前から提唱されていましたが、残念ながら現実世界で発生し得る可能性や現象をすべてバーチャル空間で再現するには、デジタル技術やデータ量が圧倒的に不足していました。

しかし、AIによる自立学習によって圧倒的な情報量を収集し、分析できる技術体系が確立されてきた現代では、かつてのデジタルツインよりもはるかに高度でリアリティのあるプロセスが実現し始めていることがポイントです。

例えば医薬品開発において膨大な研究時間を要する「化合物探索」といったテーマにおいて、デジタルツインによる精密予測が可能になれば、新薬の開発期間を大幅に圧縮してコスト削減にも寄与するでしょう。

デジタルツインが実現すること

高度なデジタルツインが可能になれば、多くのメリットが実現します。

開発期間・コストの圧縮

デジタルツインによって有効な化合物の組み合わせや、新しい化合物の効果を予測できれば、実際の創薬においてもスムーズな開発を進めることが可能です。開発期間が短くなってロスを減らせることにより、必然的にコスト削減も叶います。

当然ながら医薬品の開発コストの圧縮は薬価の低下につながることも重要です。

治験リスクの低減

デジタルツインによってあらかじめバーチャル空間上で治験を行い、どのようなリスクや副作用があるのかを検証することで、実際の治験におけるリスクやデメリットを少しでも抑えられるとすれば大きなメリットです。

新薬開発においてはどうしても実際の患者で治療効果やリスクを検証しなければならないからこそ、あらかじめデジタルツインでそのリスクを低減できれば、不幸な事故を減らすことができます。

難病の治療

医薬品の品質が向上したり、全く新しい観点から新薬の開発へアプローチできたりするようになれば、これまで治療が困難と思われていた病気や治療薬が存在しなかった症例についても治癒できる可能性が生まれます。

内閣府のBRIDGEとは

内閣府ではデジタルツインとAI創薬の実現のように、総合的な科学技術の発展やイノベーションの実現を目指して重要な研究課題などを設定し、政府としても研究開発や社会課題の解決に向けて様々な取り組みを行ってきました。その施策は令和5年度から「BRIDGE(研究開発とSociety5.0との橋渡しプログラム)」という名称で改めて強化されています。

政府と民間が協力して技術開発が進めば、人体のデジタルツイン化も夢ではなくなるかもしれません。

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取材協力
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引用元:FRONTEO公式HP
(https://www.new-dd.com/wp/wp-content/uploads/novel-targets-library_20240530.png)

自然言語AI+バイオロジストが課題を解決

FRONTEOの「Drug Discovery AI Factory」は、AIを活用して、創薬プロセスの効率化・高速化を支援するソリューションです。基礎研究・標的探索・仮説生成といった創薬の初期段階において、大手製薬企業出身のバイオロジストが自社開発の自然言語AI「KIBIT」を活用し、重複差分解析や2次元マッピング解析、ベクトル加算解析など独自の解析を実施。顧客のオーダーにあわせた標的分子・バイオマーカー・MoA・新たな適応症の提案などをスピーディーに行なってくれます。