創薬分野での量子コンピューターの活躍
量子コンピューターとは
量子コンピューターとは、量子力学の原理を用いて情報処理を行なうコンピューターのことを指します。従来のコンピューターは1ビットに1か0のいずれかしか表せないのに対し、量子コンピューターは1と0を同時に表せるのが特徴。10量子ビットが集まれば、2の10乗、すなわち1024の情報を保持して同時並列計算が可能です。1024通りの計算の末にどんな数値になる可能性が高いのかを導く場合、従来コンピューターでは1024回分の計算を1つずつ出力して計算するのに対し、量子コンピューターは同時並列計算により一度の計算でその答えにたどり着きます。何時間、何日とかかっていた計算を瞬時に行なえる「計算の高速化」が期待されています。
創薬時のシミュレーションに有効
創薬分野で量子コンピューターのメリットを活かせる分野が、分子シミュレーションです。新薬を開発する際には、薬に使用する成分の分子と分子の動きをコンピューターでシミュレーションします。様々な状況下でそれぞれの分子がどのような動きを見せるのか、何度も条件を変えて観察し、その結果を踏まえて開発を進めるためです。しかしこのシミュレーション、条件や分子を構成する原子の数が多くなるほど複雑になり、計算量が増加して時間がかかってしまう現状がありました。量子コンピューターの登場により、このシミュレーションの高速化が期待されます。
海外の創薬分野での量子コンピューターの活用例
ベーリンガー、バイオジェン、アムジェン、スイス・ロシュといった大手製薬会社は、量子コンピューターを積極的に導入して開発に取り組んでいます。
例えば、米バイオジェンは他企業と提携し、アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患を対象に、量子コンピューターから着想した分子比較アプリケーションを開発。これまでよりも短い期間での神経学的疾患の創薬を叶えるために邁進。一定の成果が出ていることを発表しています。
また、数々の企業が量子コンピューターの応用へ投資・支援を行なっており、製薬シミュレーションのための量子アルゴリズムの開発を推進。製薬業界での創薬や薬効予測の精度向上が期待されています。
国内の創薬分野での量子コンピューターの活用例
国内の例でいうと、富士通がペプチド創薬でイジングマシンを活用しているのが代表的です。イジングマシンとは、量子コンピューターの中でも組み合わせ最適化問題の処理に特化したもの。富士通は環状ペプチド創薬の際にイジングマシンを用い、約12時間での安定構造探索を実現しました。膨大な選択肢から条件を満たす最適な組み合わせ探索でき、様々な病気に対する創薬の場面で活躍することが期待されています。
自然言語AI+バイオロジストが課題を解決
FRONTEOの「Drug Discovery AI Factory」は、AIを活用して、創薬プロセスの効率化・高速化を支援するソリューションです。基礎研究・標的探索・仮説生成といった創薬の初期段階において、大手製薬企業出身のバイオロジストが自社開発の自然言語AI「KIBIT」を活用し、重複差分解析や2次元マッピング解析、ベクトル加算解析など独自の解析を実施。顧客のオーダーにあわせた標的分子・バイオマーカー・MoA・新たな適応症の提案などをスピーディーに行なってくれます。