ドラッグリポジショニング

既存薬を再開発する、いわゆるドラッグリポジショニング。新薬開発の長期化やコスト高騰を受けて、この停滞感を打破する解決策として、ドラッグリポジショニングに対する注目度が高まっています。

ここではドラッグリポジショニングにおける課題と、ソリューションになりえるサービスを紹介します。

目次
ドラッグリポジショニング

ドラッグリポジショニングとは?

ドラッグリポジショニング (Drug Repositioning)とは、既存の薬や、安全性は確認されたものの十分な効果が証明されず、開発中止となった薬剤などについて、新たな薬効を見いだし、別の疾患の治療薬として開発する方法のことです。

コロナ禍で、別の疾患の治療薬だった「レムデシビル」や「アビガン」などを新型コロナウイルス感染症の治療薬として転用したのは記憶に新しいところでしょう。

既存薬はすでに薬理学的な効果や安全性などが確認されているうえ、イチから創薬を行うよりもリスク・コストが低く、臨床試験の早期相を省略できるなど開発期間の大幅な短縮が可能というメリットがあります。

ドラッグリポジショニングの主な課題とは?

網羅的で多角的な評価・検証が難しい

ドラッグリポジショニングはこれまで、論文探索・分析等によって新規の薬理作用を持つと思われる候補薬剤を抽出し、それをウェットの基礎研究で検証するという方法がとられてきました。候補薬剤を絞り込む際は様々なデータベースを活用。当然ながらこうした作業は長い時間がかかるうえ、有望な候補薬剤がなかなか見つからないこともあります。

そもそも 膨大な論文情報やデータベースの情報を研究員個人が読み込むには限界があり、限られた情報の中では網羅的で多角的な評価・検証が難しくなります。

研究員の知識内での作業になってしまう

以前のドラッグリポジショニングは意図的ではなく、研究開発の過程で偶発的な発見によって行なれた例がいくつかあります。例えば「ラモセトロン」は制吐剤として開発されましたが、便秘の副作用があり、これを逆手にとって、下痢を伴う腸疾患の治療薬が開発されました。

近年で主流になりつつあるのは、科学的エビデンスにもとづく戦略的なドラッグリポジショニング。ただその一方で、化合物データ・臨床データ・学術論文など必要な医療データが大量かつ多様になり、情報の収集・分析がもはやヒトでは手に負えない状況になりつつあります。そこでAIを使った作業の効率化が図られるようになりました。

従来の人的アプローチの場合、論文を読み込んでターゲット選定を行なうため、どうしても研究員の知識内での作業となってしまいます。それがバイアスとなり、 本来なら存在しているはずの情報をキャッチアップできず、ドラッグリポジショニングの可能性を狭めてしまうという課題がありました。

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考察

膨大な既知情報から未知の可能性を提案
~「New-drug-discovery」編集チーム(Zenken)より~

AIならあらゆる論文情報を網羅できるため、研究者が把握できなかった情報をカバーでき、新しい気づき・アイデアを得ることが可能。ドラッグリポジショニングでは非常に重要な原因性遺伝子の特定も、膨大な既知情報から未知の繋がりや可能性を提案してくれます。

「New-drug-discovery」編集チームでは、これらの課題を解決するAIとして、FRONTEOの「Drug Discovery AI Factory」に注目しました。FRONTEOの「Drug Discovery AI Factory」は、大手製薬企業出身のバイオロジストが自然言語AIを活用し、科学的アプローチの解析手法で、顧客の要望に合わせたドラッグリポジショニングを提案。ただAIの分析結果を伝えるだけでなく、バイオロジストが仮説生成を含めて解析してくれる点が多くのAI創薬ベンチャー企業とは異なる点と言えます。

以下、そのアプローチを詳しく見ていきましょう。

FRONTEOの「Drug Discovery AI Factory」とは?

Drug Discovery AI Factory
引用元:FRONTIO公式HP(https://lifescience.fronteo.com/ddaif-sp/novel-targets-library/)

5つの解析手法でスムーズな創薬を支援

FRONTEOの「Drug Discovery AI Factory」とは、下記の5つの解析手法を用いて、従来の人の手ではアプローチしきれなかった課題をAIの活用によって解決し、創薬プロセスの大幅な効率化・高速化を支援してくれるサービスです。

近年の創薬研究は、患者の疾患データや、蓄積された膨大な分子・遺伝子情報などから必要な情報を探索・分析することが不可欠ですが、「Drug Discovery AI Factory」では新規性・成功確率の高い標的候補を短期間で選定できるだけでなく、その標的に関する仮説もあわせて提案してくれます。

創薬標的としてのポテンシャルを分析

例えば「多面的解析」では、独自の自然言語解析AIエンジンが、遺伝子の創薬標的としてのポテンシャルを網羅的・効率的・客観的に分析。膨大な論文情報や医学薬学データをベースとしており、ドラッグリポジショニングにおける製薬企業の判断をサポートします。

多面的解析とは?

多面的解析によるドラッグリポジショニング

成功率を押し上げる「適応疾患候補リスト」

FRONTEOが独自開発したAIアプリケーションを使って、創薬標的候補の遺伝子に対する「適応疾患候補リスト」を出すことが可能。ターゲット選定の際に重要な、科学性評価や市場性評価、薬品の開発状況など、複雑な評価指標についてもAIがスコアリングしてくれます。これにより、ドラッグリポジショニングの成功率を押し上げることが期待できます。

1万2000の疾患に対する評価をスコア化

前述した「適応疾患候補リスト」を人間の力で出そうとした場合、実験データ・ウェットのデータが必要になり、多くの疾患を網羅することは難しくなります。この多面的解析では1万2000の疾患に対して、関連性・原因性・優位性・安全性などの評価項目をスピーディーにスコア化。これを見て研究者は新たな気づきを得るとともに、定量的なデータによって優先順位をつけることができ、意思決定のスピードを速めることも可能になります。

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取材協力
FRONTEOの公式サイトキャプチャ

引用元:FRONTEO公式HP
(https://www.new-dd.com/wp/wp-content/uploads/novel-targets-library_20240530.png)

自然言語AI+バイオロジストが課題を解決

FRONTEOの「Drug Discovery AI Factory」は、AIを活用して、創薬プロセスの効率化・高速化を支援するソリューションです。基礎研究・標的探索・仮説生成といった創薬の初期段階において、大手製薬企業出身のバイオロジストが自社開発の自然言語AI「KIBIT」を活用し、重複差分解析や2次元マッピング解析、ベクトル加算解析など独自の解析を実施。顧客のオーダーにあわせた標的分子・バイオマーカー・MoA・新たな適応症の提案などをスピーディーに行なってくれます。