創薬モダリティの意味と代表的な薬剤

そもそもモダリティとは

医薬品業界でモダリティとは「医薬品の創薬基盤技術の方法や手段、それらに基づく分類」のことです。低分子医薬・核酸医薬・抗体医薬などが当てはまります。ただし業界によってモダリティの意味は異なり、医学界ではX線・超音波・MRIを指し、論理学では様相という意味を持つため混同しないように注意が必要です。創薬モダリティとは、薬を何から作るかという選択といえます。

創薬モダリティの種類

低分子医薬

小さいサイズの分子が本体の医薬品です。分子サイズの厳密な定義はありません。大体、分子量約500近くか以下の化合物が当てはまります。分子量500ぐらいまでが生体膜を透過でき、経口投与でも薬効を示しやすいラインです。

植物や細菌の生産物を抽出した天然物医薬と、化学者がフラスコで合成した合成医薬の2つがあります。天然由来の医薬品は近年だとあまり見られません。培養できる細菌は出尽くしたという話もあるほどです。そのため合成医薬が多くなっています。

抗体医薬

抗体を人工的に作り出した薬です。2000年代頃から増え始めました。細菌やタンパク質のような異物が人間の体に入ると、活発に活動させないように抗体が作られます。抗体は異物にぴったりと合わせるように生成。免疫システムによって異物の対応に使われます。

抗体医薬は人工的に作った抗体で治療します。高い精度で標的となるタンパク質と結合するため、副作用が少ないのがメリットです。低分子医薬では治療が難しいガン・リウマチのような自己免疫疾患系の病気で投与されています。

抗体薬物複合体 (ADC)

抗体と低分子医薬を結合した抗体薬物複合体も研究されています。広義だと抗体医薬ともいえますが、別として扱われることも多いモダリティです。低~中分子医薬の中には、高い薬理活性があっても毒性が強いものもあります。そのためリンカーを介して、抗体と化学結合させた分子にするのです。

抗体薬物複合体は抗原分子を出す標的に集積して、局所的な治療効果を出します。特に抗がん剤として使用されることが多く、設計には化学的な技術が多く反映されている技術です。

中分子医薬

500~5,000ほどの分子量を持ったものが当てはまります。古くからありよく知られているのはインスリン製剤で、分子量は5,000強です。他にも放線菌由来の特殊環状ペプチドもよく知られています。両方、タンパク質間相互作用(PPI)阻害剤です。化合物ライブラリーが整備されて研究が進み、経口投与もできるようになりました。

標的タンパク質分解誘導薬

PROTAC (proteolysis targeting chimera)を代表するモダリティです。標的となるタンパク質に結合する低分子から中分子化合物と、タンパク質の分解に関与する酵素リガンドをリンカーで繋ぎます。結果、分解を誘導できる薬剤です。

特定のリガンドを持っていないタンパク質でも創薬標的にできます。まだ研究中ですが、PROTAC 関連の論文数は増加傾向です。ケミカルバイオロジー領域でも大きなトレンドになっています。

遺伝子治療薬

欠陥がある遺伝子を修復することで治療効果を出す薬剤です。アデノウイルスベクターが使われています。たとえば、脊髄性筋萎縮症の治療薬ゾルゲンスマ®や、B細胞性急性リンパ芽球性白血病治療薬キムリア® などが遺伝子治療薬として投与されている薬です。

難病とされていた病気に対しても治療ができる薬剤ですが、ネックは薬の価格です。2020年時点では、1回の治療につき1億5千万円以上かかりました。患者が求めても簡単に使用できる薬ではないことで、その是非に議論が行われている最中です。

細胞医薬

細胞工学で創世され、再生医療に使われる移植用細胞や組織などのモダリティです。実例としては、iPS細胞から作製したオルガノイドがあります。遺伝子治療薬は細胞医薬に含まれるケースもありますが、2023年11月時点でも実用化はされておらず、まだまだ研究中の分野です。ただし、網膜色素上皮不全症治療薬として移植用細胞懸濁液に関連した臨床試験は2022年3月時点でスタートしています。

mRNAワクチン

分子量数十万のmRNAで、SARS-CoV-2 によるパンデミックにより、承認と実用化がスタートしました。分子量数十万は、中分子にも分類される核酸医薬を超えているのが特徴です。そのため核酸医薬とは別のモダリティとされています。

mRNAワクチンは季節性インフルエンザウィルスを対象としたものも開発が進行中です。生ワクチンや不活性ワクチンと比較すると大量生産に適しています。

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取材協力
FRONTEOの公式サイトキャプチャ

引用元:FRONTEO公式HP
(https://a6ny5mfs.lp-essence.com/)

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