製薬業界のAI活用状況

世界でも数少ない新薬創出国でありながら、様々な課題に直面している日本の製薬業界。厚生労働省の「医薬品産業の現状と課題」という資料(※)によれば、「医薬品の研究開発には10年以上の期間が必要」「成功確率は年々低下し、難易度が上昇」という課題があり、それを解決する施策の1つとしてAIの活用による医薬品研究開発支援が注目を集めています。

ここでは、実際に今(2023年5月時点)の製薬業界でどのようにAIが活用されているのか、ターゲット探索・リード創出・臨床試験といった段階別に解説します。

※参照元:【PDF】「医薬品産業の現状と課題」
(https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/000398096.pdf)

目次
製薬業界のAI活用状況

ターゲット探索

「10年かかる」ターゲット探索を大幅に効率化

時間のかかるターゲット探索を
大幅に効率化

新薬を開発するためには、膨大な論文情報やデータベースの中から研究テーマに合う文献を探し、薬の候補となる化合物に見当を付け、網羅的でかつ多角的な評価・検証を行ない、標的候補を選定します。

新薬開発の初期段階であるこのターゲット選定には「10年程度かかる」と言われ、最もAIなどのテクノロジーが必要とされている領域と言っても過言ではありません。

このターゲット探索において、特筆に値するのは、AIを使った独自の創薬支援サービスを提供する株式会社FRONTEO。2020年に中外製薬株式会社(※1)、武田薬品工業株式会社(※2)といった大手製薬メーカーと創薬支援AIシステムに関するライセンス契約を結び、大きな注目を集めています。

AIを使った解析・分析ができるだけでなく、創薬の知見を持つ製薬企業出身のバイオロジストがクライアントの要望に合わせた提案を行なってくれます。

※1参照元:中外製薬株式会社
(https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20200529150001_983.html)

※2参照元:株式会社FRONTEO
(https://www.fronteo.com/20200325)

リード化合物創出・最適化

数年かかる工程がわずか21日で完了

リード化合物創出・最適化とは、ターゲットとなる創薬標的への活性を示す化合物(リード化合物)を創出し、より安全性や有効性を高めて薬に適した化合物にする過程のこと。通常であれば数年はかかると言われるこの工程も、AIを活用することで大幅な効率化が図れます。

例えば、2014年に創業された香港のAI創薬スタートアップ企業の「Insilico Medicine社」は、候補化合物の創出から最適化までをわずか21日間で実施することに成功(※)。化合物ライブラリから学習したAIは膨大な数の候補から有望な化合物を特定。そのうちの1つは動物実験まで進み、良好な結果が得られたそうです。今後もリード化合物創出・最適化のプロセスにおいても、AIの活用が進んでいくと考えられます。

※参照元:EureAlert!
(https://www.fronteo.com/20200325)

臨床試験

動物実験からヒトへの副作用や効能を予測

臨床試験は創薬プロセスの中でも特に多くの時間とコストがかかる工程です。

主に臨床試験では試験計画を立て、被検者を招集し、モニタリングを実施し、データ分析や文書作成を行ないます。ところが、動物実験(非臨床試験)に成功しても、臨床試験で安全性や有効性の確認が取れなければ、イチからやり直しになってしまうケースが少なくありません。

こうした課題を解決する取り組みとして、AIが注目を集めています。Karydo TherapeutiX社と国際電気通信基礎技術研究所は共同で、「動物実験からヒトへの作用が不明な薬の副作用や効能を予測するAIを開発した」と発表(※)。この技術を使ったバーチャル治験はすでにKarydo TherapeutiX社が事業化しており、さらなるローコスト化を目指して次世代バージョンの開発を進めています。

※参照元:科学技術振興機構
(https://www.jst.go.jp/pr/announce/20200110/index.html)

【段階別】AI創薬の導入例について
詳しく見る

特に活用が進んでいないのは「ターゲット探索」の領域

創薬プロセスの課題
引用元:【PDF】医薬品開発におけるAIの活用について(https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000926770.pdf)

ここまで見てきたとおり、新薬開発においてAIの活用・導入は少しずつ進んできており、前向きな製薬企業も増えてきています。

ただ、ターゲット探索・リード創出・臨床試験という段階別に見た際に、最もAIの活用・導入が進んでいないのが「ターゲット探索」の領域。これは厚生労働省が「医薬品開発におけるAIの活用について」という資料(上の図参照)でも訴えているとおりで、今後はこのターゲット探索を「いかに効率化・高速化できるか」が製薬企業の大きな課題と言えるでしょう。

考察

網羅性・新規性の高い標的を仮説付きで
~「New-drug-discovery」編集チーム(Zenken)より~

ターゲット探索の効率化・高速化を支援するAIを提供する会社として、当メディアを運営する「New-drug-discovery」編集チームが注目したのが株式会社FRONTEO。大手企業と創薬支援AIシステムに関するライセンス契約を結んだ実績があるだけでなく、独自の「Drug Discovery AI Factory」という創出支援サービスでは、 大手製薬企業出身のバイオロジストが独自のAIを使って、網羅性・新規性の高い創薬ターゲットを仮説付きで提案してくれます。

創薬プロセスの効率化・高速化を図りたいなら、FRONTEOに問い合わせてみるといいかもしれません。下記のページでは、当メディア独自のインタビュー取材でより深くFRONTEOの魅力を掘り下げています。

AI創薬の現状・課題や
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取材協力
FRONTEOの公式サイトキャプチャ

引用元:FRONTEO公式HP
(https://a6ny5mfs.lp-essence.com/)

自然言語AI+バイオロジストが課題を解決

FRONTEOの「Drug Discovery AI Factory」は、AIを活用して、創薬プロセスの効率化・高速化を支援するソリューションです。基礎研究・標的探索・仮説生成といった創薬の初期段階において、大手製薬企業出身のバイオロジストが自社開発の自然言語AI「KIBIT」を活用し、重複差分解析や2次元マッピング解析、ベクトル加算解析など独自の解析を実施。顧客のオーダーにあわせた標的分子・バイオマーカー・MoA・新たな適応症の提案などをスピーディーに行なってくれます。